2020年06月19日

「あおのじかん」

「あおのじかん」(イザベル・シムレール 文・絵)

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おひさまが しずみ
よるが やってくるまでの ひととき
あたりは あおい いろに そまる
― それが あおの じかん

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このように始まり、それからたくさんの青い色の生きものが紹介される。

頭の羽根がぴんと立っているアオカケス。
青く冷たい空気の中では、ホッキョクグマも青く見える。

珍しい青い生きものたち。
コバルトヤドクガエル、フサホロホロチョウ、モルフォチョウ、ブルーレーサー(青い蛇)...

青い花たち。
ヤグルマギク、ホタルブクロ、ワスレナグサ、スミレ....

青い鳥たちや、海の中の青い生きもの。

夜の色はだんだん濃い青になっていく。
ぐんじょういろのイトトンボが、ルリハツタケにとまったら、あおのじかんは、そろそろおしまい。


日没後の青い時間、空気が青インクを溶かし込んだような青に染まる。
その青がしだいに濃くなっていくのを見るのが好きだった。
冬は特に、雪がすばらしく澄んだ青になる。

自然界に、たぶん青い生きものはそう多くない。
花も、他の色に比べて青い花は少ない。
それだけに、いっそう不思議に映る。

私ができるなら遭遇したいと思っているのは、魅惑的な青いキノコ、「ソライロタケ」だ。
(↓写真左上、『世界の美しいきのこ』パイ・インターナショナル刊より)

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posted by Sachiko at 22:20 | Comment(2) | 絵本
2020年06月17日

内在する数学

昔、こんなことを聞かれたことがある。
・・絵画の中には、黄金比とか何とか級数とかいう数学が入っているらしいが、絵を描く人はそういう計算をしながら描くのか?

私と、その時いっしょにいた人(絵を描く人)は、同じことを答えた。
・・いや、例えば紙の上に、自分がいちばん美しいと感じる位置に線を引くと、その比率になるのだ....

聞いた人はびっくりしていたが、計算などしない。それに芸術系の人はたいてい数学ができない(もちろん例外はある)。
数学的な計算だけで構図を作るというやり方があったとしても、それでは魂が入らないだろう。


自然界にはさまざまな数式が内在する。
花の構造の中に、銀河の渦に、巻貝のかたちに....
ミツバチの巣、フラクタルな雲、惑星の軌跡....

それらを内的に響かせるのか、抽象思考の学問として取り出すのか...
ヘルマン・ヘッセの『ナルチスとゴルトムント』の中に、こんな会話がある。

ゴルトムント:
「一枚の花びら、あるいは一匹の小さい虫が、図書室全体のすべての本よりはるかに多くを語り含んでいる、とぼくは思います。
時々ぼくはギリシャ文字のどれかを書きます。・・文字は鳥となり、羽毛を逆立て、からだをふくらし、笑い、飛び去ります。
あなたはそういう文字をたいしたものとは思わないでしょうね?でも、そういう文字で神さまは世界をお書きになった、とぼくは思いたいのです」

ナルチス:
「それは魔法の文字で、それによってあらゆる魔精を呼び出すことができる。もちろん、学問をするのにだけは適しない。
オメガという文字がヘビや鳥になることを、精神は容認しない。
精神は、自然に逆らってだけ、自然の反対物としてだけ、生きることができる。
今こそ君はけっして学者にはならないだろうということを信じるね?」


自然の反対物、とナルチスは言った。反対物は表裏一体だ。
例えば変数や記号や何やらのソースが、ウェブ画面上で見ると、構図を持ったかたちや色彩になったりする。#ffffffは白で、#000000は黒だ。

これは宇宙の裏側に似た姿ではないか、と思う。
それが可視的な世界に反映されたとき、葉っぱが巻き上がる螺旋になり、銀河の渦になる。

高校の数学は苦痛以外の何ものでもなかったけれど、試験などがなければそれ自体が嫌いなわけではない。
無味乾燥の裏側に神秘がひそんでいて、花や鳥や銀河になって飛び立つのを見ることができるなら。
  
posted by Sachiko at 22:17 | Comment(2) | 未分類
2020年06月14日

チャイブ

ハーブが旺盛に育つ季節になってきた。
チャイブはもう花が咲いている。

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ネギ科のチャイブは、スープの仕上げに散らしたりするが、いわば万能ネギで、アサツキの代わりに和食の薬味としても使える。

バラの病気予防のコンパニオンプランツとして知られ、我が家でもバラの株元に植えてある。
ピンクの花も、観賞用にされたり、魔除けとして窓辺に吊るしたりしていたそうだ。

この季節には、チャービルやイタリアンパセリ、ディル、フレンチタラゴンなどといっしょに細かく刻んで柔らかくしたバターに混ぜ、ハーブバターを作る。
それに、すりおろしたニンニクをティースプーンの先にほんの少し(ニンニクは入れすぎ禁物)。

ライ麦パンや全粒粉入りのカンパーニュなど、シンプルなハードブレッドによく合う。
ハーブバターはドライハーブでも作れるが、やはりフレッシュがいい。

大抵のものは一年中手に入る時代だけれど、その季節ならではのものには特別な力がある。
フレッシュハーブが香る6月は、妖精たちも喜びにあふれて仕事にいそしんでいるはずだ。
  
posted by Sachiko at 22:41 | Comment(0) | ハーブ
2020年06月12日

緑の石の物語

鉱物つながりで、久々に『指輪物語』から。

緑の石が最初に登場するのは、裂け谷のエルロンドの館だった。
ビルボが自作の詩を披露したあとでフロドに言った。

「・・アラゴルンがどうしても緑の石を入れろといってきかないんでね。かれはそのことを重大に考えているらしいのだ。わけは知らないが。」

この緑の石については、指輪物語に先立つ時代のことが書かれた『終わらざりし物語(Unfinished Tales)』の中に記述がある。

『・・・エネジアルという名の宝石細工師がいた。・・エネジアルは生長する緑のものすべてを愛し、かれの最大の喜びは木もれ日を眺めることだった。
そしてかれは、澄んだ太陽の光を封じ込めた宝石、木の葉のような緑色をした宝石をつくろうと思いたった。』


エレサールと呼ばれたこの石を、後の世にひとりの者が受け取りに来て、彼は石と同じエレサールと呼ばれると予言された。
エレサールは、アラゴルンが王位に就いたのちに名乗った名だ。

もうひとつ別の物語もある。
エルフの金銀細工師ケレブリンボールが、枯れることのない緑の草木を望むガラドリエルのために、もうひとつのエレサールを作った。
それはガラドリエルの娘ケレブリアンから、さらにアルウェンの手に渡り、そしてアラゴルンへと渡った....


木洩れ日から作られた緑の宝石.....
あらゆる物質は、光が凝縮したものだと言われる。

私がいちばん好きな緑の石は、日に透かした葉っぱの色のペリドットだ。
エルフが作った緑の石がどれほどの美しさだったかは想像を超えるけれど、ほんのひとかけら、思いを馳せてみる。

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posted by Sachiko at 22:09 | Comment(2) | ファンタジー