2021年01月30日

芽吹くいのち

ウルスラ・ブルクハルト「Elementarwesen - Bild und Wirklichkeit(元素霊 ― イメージと現実)」より。

各章のあいだの短い詩から、今日は妖精たちの詩をひとつ。

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  芽吹くいのち

 芽吹くいのち
 花々や木々の中で
 秘められた夢のように
 妖精たちが織る

 不思議な響き
 囁き ざわめき
 すべて混ざりあって
 妖精たちが歌う

 植物の上に
 象られる雨
 ヴェールをなびかせ
 妖精たちが踊る

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最高気温が0度近くまで上がったので、今日の吹雪は湿り雪だった。
大地は雪に覆われて、妖精たちは地上の活動から退いている。

昆虫たちも眠っている。
雪にすっかり覆われた場所は、0度以下にはならない。
雪の下の落ち葉の中や、木の隙間に潜り込んで越冬するのだ。

知ってはいても、春一番に飛び立つ蝶を見ると、どうやって冬を越したのかと毎年思う。

あんなに小さな生きものが、−10度以下や吹雪にも耐えて春を迎えられるのは、妖精たちがそばにいて守っているからだ。
花のエルフたちにとって、昆虫は大切な存在だから。

気がつけばもうすぐ立春。
今年の立春は2月3日で、例年より1日早い。
  
posted by Sachiko at 21:44 | Comment(0) | ウルスラ・ブルクハルト
2020年11月16日

ノームの戯言

ウルスラ・ブルクハルト「Elementarwesen - Bild und Wirklichkeit(元素霊 ― イメージと現実)」より。

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  ノームの戯言

 真夜中に目を覚ます

 壁の中から奇妙な
 
 ピシッとひび割れる音

 あたりを見回せば

 笑っているのは誰?

 眠りを妨げるのは何?

 小さな誰かさん

 そんなに早く逃げるの?

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久々に、ウルスラ・ブルクハルト「元素霊 ― イメージと現実」の各章のあいだに入っている詩をひとつ。
ごく短い不思議な詩...


今日はいかにも11月らしいどんよりと暗く寒い日で、夕方からは雨になった。
庭のバラたちも昨日剪定を終えて、来週冬囲いを済ませれば、あとは冬を待つばかり。

夏のあいだ外で活動していた元素霊たちは、冬には大地へと還る。いたずら好きのノームは冬中、地の下でおとなしくしているのだろうか。

夜中に時々家のどこかがピシッと音を立てるのは、家の小人の仕業かな.....?
  
posted by Sachiko at 21:28 | Comment(6) | ウルスラ・ブルクハルト
2020年01月30日

クリストフォロスの木

ウルスラ・ブルクハルト「Das Märchen und die Zwölf Sinne des Menschen(メルヒェンと人間の12感覚)」より。

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ノルウェーのおとぎ話に、ある王様が城の樫の木をどこまでも大きく繁らせた話がある。木は窓を覆い、すべての光をさえぎった。
このように自分の自我の木のことだけを考え周りを忘れる者は、じきに暗闇の中に座ることになる。

クリストフォロスは全く違う木を植えた。
巨人の彼は、ある隠者から、献身によって最高の王を見つけることができると聞き、人々を背負って川の向こうへ運ぶ渡し守になった。
彼はそこで最も偉大な王に出会って仕えたいと願っていたのだ。

ある時、渡し守は子どもを背負った。巨人にとってはわけもない軽さのはずだった。
だが子どもがしだいに重くなり、彼を水の下にめり込ませたとき、この王の力と権威を知った。

子どもは幼子イエス・キリストだった。
この後彼は、クリストフォロス−キリストを担う者−という名を与えられた。
幼子イエスは彼に、彼の杖を地面に刺すように言った。杖は花咲く木になった。


その調和のとれた木では、リスが争いの言葉をあちこちに運ぶことはない。それは自我がキリストの担い手になった人の木だ。

すべての人は、自分の自我の木を植え、それをキリストの木に変える可能性を持っている。
創造は七日目に完了したのではない。私たちは新しい未来の創造のために生きている。
そして世界の終わりではなく、世界が新しい地球へと移行することについて語ることができるのだ。

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ユグドラシルについては、Yggは「私」であり、drasilは「担う」という言葉に語源を持つ、と言われていた。

真の「私」である永遠の自我がキリスト意識であるなら、「キリストを担う者」という巨人クリストフォロスの名は、そのまま巨樹ユグドラシルの名だということになる。何だかゾクゾクするような感覚だ。

人間が宇宙的存在としての本来の姿に還る時、それは宇宙樹の姿と重なる。
伝説の深みに降りると、そこにはまだ人類共通の言葉が生きている。
新しい地球への移行を語るには、この共通言語が必要なのだと思う。
  
posted by Sachiko at 22:02 | Comment(0) | ウルスラ・ブルクハルト
2020年01月23日

言葉の源泉

ウルスラ・ブルクハルト「Das Märchen und die Zwölf Sinne des Menschen(メルヒェンと人間の12感覚)」より。

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天使からのメッセージを小さくしたものがメルヒェンである。それは天使が与えるもののように大きくないが、その反映である。
それは天使の言葉で語られ、イメージやシンボルの像によって夢のように自らを表現する。

すべての宗教の創始者や人類の偉大な教師はみな、このイメージ言語で語った。その言葉は幼い子どもでも賢い老人でも、誰もが理解することができた。
そのことは古い伝承が語るように、人々の共通の言語を思い起こさせる。

聖書によればこの言語は、人間が傲慢になり、天に届く塔を建てることで神の影響圏に侵入したいと思った時代に使われていた。
その共通言語の崩壊は、分離、誤解、戦いの始まりとなった。

天使の翼が川の架け橋になるように、象徴言語もまた、わかり合うことを望む異なる言語を繋ぐ。

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神話やメルヒェンは、象徴言語で語られている。
多くの民族の神話は似通っており、よく似たおとぎ話が世界中に存在する。それは共通の源から汲まれた言葉だったのだ。

この共通言語は、言葉が単なるコミュニケーションツールと考えられるようになった現代に共通言語と言われているもの(例えば英語)とは意味が違う。
魂のはるかな深奥にある共通の泉にたどり着くなら、そこは分離のない人類のふるさとだとわかるだろう。

古い時代、コミュニティには共同の泉や井戸があった。
そのように、メルヒェンは人類共同の泉の周りで語られた壮大な井戸端会議だと考えると楽しい。
  
posted by Sachiko at 22:08 | Comment(0) | ウルスラ・ブルクハルト
2020年01月19日

橋を架ける話

ウルスラ・ブルクハルトの「Das Märchen und die Zwölf Sinne des Menschen(メルヒェンと人間の12感覚)」の中で、このような中東のおとぎ話について紹介されている。

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「・・新しく創造された地球の上で、人々は川と渓谷によって分断されていることに苦しんでいました。

人々は互いに知り合い理解しあうために集まりたかったのですが、その方法を知りませんでした。

そこに大きな天使が現われて片方の翼を川の上に置き、橋が何であるかをイメージで示しました。」

天使は人間に「橋を造れ」と指示することができなかった。誰も橋とは何かを知らなかったから。
天使は彼らにイメージ像の中で新しい考えを与え、それは人々にとって内なる考えとなった。

その考えから彼らは最初の橋を造ることができた。人々はイメージを理解し、それを行為によって現実のものとした。

天使は天の使い、人類の教師で、夢や物語を通して、彼らは捜し求めている人々に答えと洞察をもたらした。
天使たちは、別々に分かれた世界、天と地、神と人間、人間の中の意識と無意識を結びつけ、人類の善のために働く。

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以前から、着想というものはどこから来るのか?と思っていたが、この話はそこに光を当ててくれるようだ。
人間の内なる考えに先立って、高次存在からイメージ像がやってくる。人間が地上で現実化したものは、すでに別次元にイメージとして存在した。

天使が翼を川の上に置く、このイメージはとても美しい。
古いメルヒェンはこのようなイメージ言語で語られていて、人々がイメージ像をそのまま内なる考えとして理解することができた時代があった。

幾つものメルヒェンや伝説の中で繰り返し現れる象徴がある。
森の中で道に迷う、三つの宝、たくさんの男の子のあとに生まれる女の子、賢い末っ子、魔法にかけられて動物の姿になる、雪の上に落ちた三滴の赤い血.....etc.

現代人はもうこれらのイメージ像をそのままでは理解できない。幼い子どもはできるらしいが、現代の子どもたちの環境は、イメージを内的に体験する間もなく、大人社会の「現実」への適応を強要されているように思える。

こうして分断は続く。だが“イメージ”は今も、あちらとこちらを繋ぐ橋なのだ。
橋を架ける場所は、各自の内側深いところにある。それが天使の翼なら、安心して渡れる気がする。
   
posted by Sachiko at 22:08 | Comment(0) | ウルスラ・ブルクハルト