2018年08月14日

内なる木

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みんながあまり注目しない現象がある。それは内なる世界の荒廃だ。これはおなじように脅威だし、おなじように危険だ。
そして、この内なる世界が荒れはてないように、ちいさな内なる樹木をためしに植えてみてはいかがだろう。(by ミヒャエル・エンデ)

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外側の世界の荒廃は、この内なる世界の荒廃の反映だということが、未だ当たり前の共通認識になっていないことがもどかしい。

たとえば異常気象と呼ばれる現象について、気象予報士は、ある海域の海水温上昇が原因で…などと説明する。すでに現象したものは、原因ではない。地球の気象は、人間の魂の在りようと深くつながっている。


そしてエンデは続ける。

---たとえば、いい詩を書いてみよう。これは内なる木を植えることだ。---


いろいろな方法で、内なる木を植えることができる。内なる木を植え続けて、内なる森を創ろう。

その内なる森に、内なる神殿を建てよう。自分自身の内なる神性のために。

ほんとうの神殿を建てることができたなら、その奥深くに宿る内なる神性は、同時に他のすべての存在と共通の内なる神性でもある。

まずはちいさな内なる木をためしに植えてみよう....
 
posted by Sachiko at 22:33 | Comment(2) | 言の葉
2018年07月29日

沈黙を聴く

「もしも言葉に沈黙の背景がなければ、言葉は深さを失ってしまうであろう」
マックス・ピカート「沈黙の世界」より。

時々、これを読み返す。70年も前に書かれたと思えないほど(日本語版は1964年刊)、まさに現代、危急に必要とされる名著だと思う。

ここで言われている沈黙とは、単に言葉が語られていない状態ではなく、それ自体が始原の現象として“存在”するものだ。

ー言葉と沈黙とは密接不離の一体をなすものだー

密接不離----昨日触れた、見えるものと見えないもの、“色”と“空”のように。

花も、木も、ひとも、あらゆる存在は、沈黙をまとうことで、尊厳あるそれ自身を立ちあげる。

たとえば1本の草のまわりに沈黙を聴く。するとそれは、ちいさな草であることを超えた、宇宙的な姿を開示してくれる。

できるなら、あらゆる事物をそのように見られたらと思う。いつもそうできるわけではないけれど。

現代の言葉をピカートは「騒音語」と呼んだ。
精神の行為によって沈黙から生まれるのではなく、喧噪から生まれて喧噪の中に消えていく。

「言葉はもはや精神として存在しているのではなく、単なる騒音として存在しているに過ぎない。これは精神の物質への転換である。」(本文より)

騒音語の海から、生きた実在としての言葉を救い出すことがますます困難な時代は、ピカートの憂慮をはるかに超えてしまった。

ピカートが「ひとつの世界が騒音語の上に打ち立てられた」と言ったのは、まだラジオの世界だったのだ(現代のインターネット語などを見たら、彼はどう思うだろう)。

「沈黙を創れ」という言葉で本は終わっている。
沈黙を創る場は、自分自身の内・・・そこには、何ものも損なうことのできない源につながる場所があると信じて。
 
posted by Sachiko at 22:00 | Comment(2) | 言の葉
2018年07月13日

西の魔女の言葉

「サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」

いつかある時、こんな風に言ってくれる人が欲しかった。
シロクマもハワイに適応してウミガメのようになるべきだ、根性だ、気合いだ!という人々もまた多かったのだ。それほどまでに、みんなほんとうにウミガメだったのかはわからない。

ずっと思っていた。人間は人間以外の動植物に対しては、けっこう適材適所を心得ている。

サボテンは砂地に植え、水生植物は水辺に植える。
コアラがユーカリしか食べないからといって、偏食はダメ!などと言わない。
(草食動物の牛に肉を食べさせた愚かな事件はあった。経済動物として扱うとこんな事件も起きる。)

「深く生まれついた自分の心が命ずるままに存在し成長し生き死ぬことが許されていないような、哀れな呪われたものは、地上にはたった二つしか存在しない。人間と、人間によって慣らされた家畜だけだ」(ヘルマン・ヘッセ)


「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。」

そんな場所を求めるシロクマは、北極を目指して旅する。道すがら、西の魔女の言葉やそれに類するものに出会うかもしれない。それらを送り込んでくるのはきっと「深く生まれついた自分の心」なのだ.....

posted by Sachiko at 21:33 | Comment(2) | 言の葉