2020年03月12日

「マーヤの植物だより」

「マーヤの植物だより」(レーナ・アンデルソン)

「マーヤ」シリーズの絵本は三冊あり、訳者によって、作者の名前がアンダーソンだったりアンデションだったりアンデルソンだったりする。
ここではスウェーデン名としてなじみのあるアンデルソンを採用。

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たくさんの木や草や花やハーブとともに、マーヤはすばらしい時を過ごす。
トネリコの枝につるしたブランコに乗ったり、弟のペッレの誕生日にイチゴのケーキを作ったり、カシの木のてっぺんを別荘にして、ひみつの友だち(ドングリの妖精)と過ごしたり...

仲良しの友だちといっしょにラベンダーのサシェを作ったり、シダの葉の下で雨宿りしているトガリネズミに出会ったり、チャイブを刻んでオムレツに入れたり。

一日の終わりに、歯をみがいたあと、お気に入りの椅子でのんびりとスイカズラの香りを吸う時間、外はまだ明るい。

ひとつひとつの植物に、短い詩のような言葉が添えられている。

子どもが育つのに最もよい環境は田園だという。
自然が大好きな少女マーヤの、豊かでしあわせな植物ライフのお話。

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posted by Sachiko at 21:29 | Comment(0) | 絵本
2020年03月04日

「あなただけの ちいさないえ」

「あなただけの ちいさないえ」
(文/ベアトリス・シェンク・ド・レーニエ 絵/アイリーン・ハース)

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― ひとには だれでも、
  そのひとだけの ちいさないえが ひつようです ―

それは、子どもたちがお父さんやお母さんといっしょに住んでいる家のことではなく・・・秘密の家になるところは、いくつもある。

クロスの掛かったテーブルの下、誰にも見つからない木の上、大きな傘、藪の後ろのくぼみ.....


― なかまといっしょに すごすのは、
  たのしいものです。

  おとなのひとと いっしょに すごすのも、
  たのしいものです。

  それでも、ときどき あなたは、
  みんなとはなれて ひとりになりたいと、
  おもうときがありますね ―


そんな時に、自分だけの小さな家があったら....
椅子の後ろのすみっこ、大きな帽子、お面をかぶること...

お父さんのひざにすわることは、たのもしい、小さな家
お母さんの腕に抱きしめられることは、やすらぎの、小さな家...

そして、大切なことは、人が、その人だけの小さな家にいるときは、むやみに話しかけたりしないこと、ひとりにしてあげること。
話しかける必要があるときは、そっとノックし、静かに話しかけること、礼儀正しく....


― ひとには だれでも そのひとだけの
  ちいさないえが ひつようです ―


とても大切なことが書かれている、小さな絵本。
テーブルの下だったり、傘の中だったり、小さな家は、外側から見るととても小さいけれど、ほんとうはとても大きい。

きっと、聖堂と呼ばれる建物よりも、もっと厳かで、もっと大きい。むしろ、聖堂はこの場所を外側で目に見えるかたちにしたものなのだ。

さまざまな小さな家を持っていた子どもたち、大人になっても、どうかその場所のことを忘れずに。
  
posted by Sachiko at 21:54 | Comment(2) | 絵本
2020年02月26日

「かぜさん」

「かぜさん(Windchen)」(ジビュレ・フォン・オルファース)

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かぜさんが一休みしているので、男の子がうかべた小舟はうごきません。
かぜさんが遊びにやってくると、小舟は走りだしました。

かぜさんと男の子は、手をとりあって野原や丘を走ります。
くだもの畑でかぜさんは、りんごの木をゆすって実を落としてくれました。

ふたりが跳ねまわると、色づいた葉っぱのこどもたちも、はらはらと舞いおりてきました。

かぜさんと男の子は、降りてきた雲にのって空をかけまわります。
男の子の家で降りたら、かぜさんはもう行かなければなりません。

かぜさんは、いいます。
「あすも、あそびましょうね」
男の子は、いいます。
「あすも、あそぼうね」

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ジビュレ・フォン・オルファースは、教師などを経て24歳で修道女になったあと、8冊の絵本を出し、34歳の若さで世を去った。

「かぜさん」の初出は、まだ大きな戦争が起こる前の1910年。時間は今よりもはるかにゆっくりと流れていたことだろう。

子どもの時間も素朴でおだやか、風や草木と友だちになれた時代。
オルファースのやさしい絵本にはいつも、そんなしあわせな子どもの姿が描かれていて、100年以上経った今も静かに読みつがれている。
  
posted by Sachiko at 22:23 | Comment(0) | 絵本
2020年02月19日

「雪のおしろへいったウッレ」

「雪のおしろへいったウッレ」(エルサ・ベスコフ)

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6歳の誕生日にスキーをもらったウッレは森にでかけました。
ウッレが呼びかけると、白く輝く霜じいさんが現われ、ウッレをお城へつれていってくれて、ウッレは冬王さまにあいさつしました。

お城の中には、スキー靴を作ったり、靴下を編んでいる人たちがいました。子どもたちも、ミトンを編んだりスキーやソリを作ったり忙しそうです。
クリスマスプレゼントにスキーやソリをほしがる子どもが多いからです。

仕事が終わると、子どもたちはウッレといっしょにスキーをしたり、スケートをおしえてくれたり、楽しくあそびました。帰りは、霜じいさんが森のはずれまで送ってくれました。

やがて冬王さまは北極に引きあげ、雪どけばあさんが雪をとかし、とうとうある日、春の王女さまが白いチョウチョに引かせた車に乗ってやってきました。

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スキーをもらったウッレが待ち遠しくてしかたがなかった冬がやってきた。
何百万もの星のように、きらきらと光る雪。すばらしくきれいな森の中。
雪だるまに雪の砦、雪合戦など、楽しい冬の遊び。
クリスマスの朝の窓ガラスには、びっしりと氷の花。

そう、これだ!と言いたくなるような冬の景色だ。
雪や氷や霜が輝くほんものの冬のあとにやってくるからこそ、春はことのほか美しい。

冬の国スウェーデンの、美しく楽しい冬の物語。
  
posted by Sachiko at 22:10 | Comment(0) | 絵本
2020年02月01日

「ごきげんボッラは なぞ人間!?」

「ごきげんボッラは なぞ人間!?」(グニッラ・ベリィストロム)

「ボッラは すごく ごきげんだ」の続編。

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ボッラは、4歳になりました。

―いったい、何を考えているの?
ボッラはきょうもうれしそう。

世間の人たちは、ふつうの人には通じない、難しいことばを並べてひそひそ話。

 疾病、自閉症候群、発達遅滞児、
 精神病、神経症、心身症、
 情緒障害、虚弱性、熱病性、幼児性....

「ボッラは、理解することがほとんどできないの」と、ひとこといえばいいものを、それをいうのがこわいのです。


子どもたちは、ボッラを何とよぶかよく知っています。

 バカボン、きどりや、アホ、トンマ
 ノロマ、バカ、かわりもん....

きりがないほどでてきます。
でもボッラのいいところは、そんなことをきいても悲しがらないところなんです。

ビル兄ちゃんは思います。
いつかボッラは、みんなのわる口がわかるようになるかもね。
そしたら、悲しがるかな。泣きながらかえってくるかしら?

その日がきたら、みんなボッラのわる口はやめるべきだ。
ぼくだけでも、ぜったいやめるんだ!


怒りの詩:

ビルがつくったりっぱなお城を、ボッラがこわしちゃった。
どうしておまえはわからないんだ!

もっと怒りの詩:

ママだって、たまには、思ったとおりにいうべきだよ。

“ひどいわ!やっかいだわ!
 もうやりきれない!がまんならないわ!”

正直にいうべきだ、そのとおりにね。
だれもおこらない、いい日だってあるんだから。

ビル7歳:

サンタクロースがおじいちゃんだったとわかってしまって、ふしぎなことがみんな消えちゃった。
トナカイも、天使も、山の精も、小人たちも。

おとなになると、ふしぎなことも、変わったことも、もうおしまい。
なんでも、計ってしまう。
なんでも、わかってしまう!

ふしぎなことは、もうおしまい?
いいえ、ほら、あの子!
ひみつの人!ふしぎな人!
ふしぎな人、ボッラだけはのこっています。

ある人は、聞こえない、しゃべれない。
ある人は、目がみえない。

ある人は、杖をもち、
ある人は、無口で無言。

人間には、あらゆる人がいるのです。
世界は、ふしぎなことでいっぱいなのよ!

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ある人はああで、べつの人はこうで...
誰ひとり同じ人はいないのに、少しずつ似ている人たちが「みんな」と呼ばれ、その「みんな」と違っていると、やっかいなことになるらしい。

「みんなちがって みんないい」という境地に、いつになったらなれるのか。
それでも気が遠くなるような時間をかけて、何度も後戻りを繰り返しながら、ゆっくり、少しずつ、人類はそこへ向かう。

「人類」なんていう共通意識が持てるようになったのも、ほんの最近のことだ。
こんなにもゆっくり、ゆっくり....ボッラのように。
こんなふしぎな人間という存在がいて、大きな大きなところから、きっと見守られている...
   
posted by Sachiko at 22:35 | Comment(2) | 絵本