2020年09月28日

「 MAJA AUF DER SPUR DER NATUR 」

「 MAJA AUF DER SPUR DER NATUR(自然をたどるマーヤ) 」
(Ulf Svedberg / Lena Anderson)

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マーヤといっしょに自然界の四季をたどる絵本。
「マーヤ」シリーズの中で、他の2冊はレーナ・アンデルソンが絵と文を書いているが、これは絵のみ。

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春には小鳥が歌い、夏にはたくさんの花や虫がやってきます。
マーヤはベリーやキノコや果実をみつけたり、秋には渡り鳥を観察します。木の葉はすばらしい色に変わっていきます。

冬になると色が少なくなって、植物や、暖かい季節が好きな動物たちはあまり心地よくありません。
それでも霜や雪にはすばらしい美しさがあります。


切り株の年輪を見て、方角を知る方法がある。
小鳥のさえずりは、何て美しいの!
花と蜂は、とても仲よし。

刺す生きものもいっぱい。
蚊や蜂、アリ、イラクサの葉も!

野に出て植物を観察しよう。
ハーブにベリーに木の葉っぱ。

川辺にすわって魚つり。
いろいろなトンボも飛んでいる。
クモはどんなふうに糸をかけていくのかしら。

動物たちは冬じたく。
渡り鳥は南へ旅立つ。
雪の上の足あとで、何の動物かがわかる。
枝に残った赤い実を食べにくる小鳥たち。

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このように、マーヤは自然の中で季節の移り変わりを楽しむ。
四季の章の冒頭には、それぞれ4人の詩人による詩が載っている。
春はストリンドベリ、夏はリンドグレーン、秋はメーリケ、冬はモルゲンシュテルン。


  9月の朝

 世界はまだ霧の中にまどろみ
 森も草地も夢みている

 君はじきに見るだろう 
 霧のベールがすべり落ち
 まことの蒼穹が現れるのを
 
 湿気を帯びて秋は深まる
 暖かい金色の流れの中で

   エドゥアルト・メーリケ 


  三羽のスズメ

 裸になったハシバミの枝で
 三羽のスズメが寄りそっている

 右のはエーリヒ、左はフランツ
 真ん中にいるのは生意気ハンス

 みんなしっかり目を閉じて
 上には雪が降っている、ほら!

 みんなでくっつきあったなら
 ハンスは誰より暖かい

 三羽はそれぞれおたがいの
 心臓の音をきいている

 どこかへ飛び去っていないなら
 みんなまだそこにいるよ

   クリスティアン・モルゲンシュテルン


※この本は以前、「マーヤの春夏秋冬」というタイトルで日本語版が出ていたが、中身がほとんど差し替えられていた。
季節の詩はすべて日本の詩人のものに代えられ、内容も、スウェーデンと日本の季節感の違いは何か、というような話になっているので、古本で見つけた時には要注意。

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posted by Sachiko at 21:52 | Comment(0) | 絵本
2020年09月24日

「みずうみにきえた村」

「みずうみにきえた村」
「グレイリング」と同じジェーン・ヨーレンによるお話と、おなじみのバーバラ・クーニーの絵による絵本。

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「6つのころのわたしは、この世にはこわいものなんか、なんにもないとおもっていました...」

お話はこのように始まる。
学校までの道のりには、古い粉ひき場や教会があり、夏の昼下がりには川でマスを釣った。

夏の夜には庭のカエデの木の下で眠ったり、ホタルをつかまえたりした。
冬、パパは湖の氷を切り出し、ママはストーブを燃やしつづけた。
3月にはカエデの幹に取り付けたバケツから、あまい樹液をなめた。


そのうちに、村のようすが変わってきた。
村の人たちは何度も会館に集まり、ボストンから来た人の話を聞いた。

大都会ボストンの人々が、大量の水を必要としているそうだ。
この谷間のきれいな水を、お金と、新しい家と、もっといい暮らしと交換できるのだという。


「・・・ボストンの人たちが水がのめるように、
わたしたちの村を水のそこにしずめることになったのです...」


まずお墓の引っ越しが行われ、次には木という木が切り倒され、家々が壊され、トンネルが掘られ、堤防が造られた。


「しっかりおぼえておおき、サリー・ジェーン」パパはいいました。
「わたしらの村をおぼえておくんだよ」
でも、もうちっともわたしたちの村のようにはみえませんでした。


せき止められていた川の水はゆっくりと流れ込み、小さな町や村を水底に沈め、すっかり沈むまで7年の歳月がかかった。

“わたし”が大きくなったあと、パパとボートで貯水池に漕ぎ出した。
パパは水底を指さした。
教会が建っていた場所、学校、組合会館、粉ひき場....
「・・もう二度とみることはないだろう」

なにもかも、すっかり水の底に消え去ってしまった....


作者による前書きにはこのように書かれている。

・・・おなじようなことが、大量に水を必要とする大都会を近くにかかえた、世界中のあちこちでおこっています。
そういうところにできた貯水池は、取引の結果生まれたものですが、取引の例外にもれず、すんなりと成立したものはひとつもなく、文句なしの条件で成立したものはひとつもありませんでした。

このようなことは、今も起こり続けている。ダムとは限らない。
大都会に大量の電気を送るための取引、その廃棄物を埋めるための取引。
小さな町や村のきれいな水、きれいな土地を、お金やもっといい暮らしと交換するための取引....
取引の例外にもれず、すんなりと成立するものはひとつもないだろう。
  
posted by Sachiko at 21:34 | Comment(0) | 絵本
2020年09月16日

「グレイリング--伝説のセルチーの物語--」

「グレイリング--伝説のセルチーの物語--」
(ジェーン・ヨーレン文 / デヴィッド・レイ絵)

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・・・昔、海辺に漁師の夫婦が住んでいました。
ふたりは暮らしに満足していましたが、子どもがさずからないことを悲しんでいました。

ある夏の日、漁師は迷子になったアザラシの子を見つけ、上着にくるんで家に連れて帰りました。

妻が上着を受けとると、そこにいたのはアザラシではなく、灰色の目と灰色の髪をした子どもでした。

「セルチーだ!陸では人間、海ではアザラシというセルチーの話、あれは作り話だと思っていたのに」

「あなた、この子は陸の上では人間でいられるのね」

夫婦は、絶対にこの子を海には帰すまいと思い、子どもをグレイリングと名づけて育て、けっして海に行ってはいけないと言い聞かせていました。

グレイリングが若者に育ったある日、この地方に激しい暴風雨が襲い、漁師の舟は沖合で沈みそうになっていました。

「だれか、あのひとをたすけて!」
妻は叫びましたが、町の人たちは誰も命がけで漁師を助けようとは思いませんでした。

「母さん、ぼくが父さんをたすける」
そう叫んでグレイリングは海に飛び込みました。

波の下で、グレイリングは大きなアザラシの姿になり、漁師を助けて岸に連れ帰ると、沖に向かって行きました。

海岸ではグレイリングの服だけが見つかり、町の人たちは彼が溺れたのだろうと思いました。

夫婦は悲しみながらも、海に帰ったのはあの子にとってよかったのだ、と思いました。

その後、年に一度、夫婦の小屋のそばの海にグレイリングが帰ってきて、はるかな海の物語や歌を聞かせるのでした....


海ではアザラシ、陸では人間というセルチー(ここではセルチーと書かれているが、一般にはセルキーと表記されることが多い)の伝説は、スコットランドの島々に伝わっている。

子どもが灰色の目と髪をしていたように、そのあたりにいるのはハイイロアザラシだそうだ。

アイルランドでは、ローンと呼ばれる同様のアザラシの化身の伝説があり、動物と人間のあいだを行き来するこのような存在の話は世界中で伝えられている。
そして動物の化身は、たいてい最後は動物界に帰っていくのだ。

アザラシはアイヌ語で「トッカリ」という。
北海道の海沿いの町では、今もふつうにアザラシをトッカリと呼ぶ人たちも多い。
    
posted by Sachiko at 22:21 | Comment(2) | 絵本
2020年06月30日

「ルピナスさん」

「ルピナスさん」(バーバラ・クーニー作・絵)

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ルピナスさんは、小さいアリスの大おばさんで、丘の上に住んでいます。
ルピナスさんも同じアリスという名前で、アリスのおじいさんは大きな船でアメリカに渡ってきたのです。

アリスは、自分も大きくなったら遠い国に行って、それから海辺の町に住むと言いました。
おじいさんはアリスに言いました。

「もうひとつしなくてはならないことがあるぞ。
世の中を、もっと美しくするために、なにかしてもらいたいのだよ。」

アリスはそうすると約束しました。

大きくなってミス・ランフィアスと呼ばれるようになったアリスは、遠い国々を旅しましたが、あるとき背中を傷めてしまい、旅をおしまいにして海辺の家に落ちつきました。

「世の中をもっと美しくしなくてはならないわね」

あるとき、丘のむこうにルピナスの花が咲き乱れているのを見ました。庭から、風で種が運ばれていったのです。

それからミス・ランフィアスは、たくさんのルピナスの種を村のあちこちにまいて歩きました。
次の春、村じゅうがルピナスの花であふれました。

すっかり歳をとったミス・ランフィアスは、ルピナスさんと呼ばれるようになりました。
ルピナスさんは、小さいアリスに言いました。

「世の中をもっと美しくするために、なにかしなくては」

「いいわ」小さなアリスは約束しました。

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美しい絵本にとって余計なことを先に言ってしまうと、ルピナスはマメ科でとても繫殖力が強い。野原や道端で野生化しているのをよく見かける。
実は危険外来種なので、そこらに種を蒔いてはいけない。

本題はそこではなく、「世の中をもっと美しくするために」という話だった。
人生における望みや課題は人それぞれだけれど、このひとつの約束は、実はすべての人が生まれるときに持ってきているものではないのだろうか。

自分が何をしにこの世にやってきたのか....現代社会のシステムは、そのようなことを考えさせないようにできているらしい。

でも時代は変わる。
子どもたちが早い時期に、それぞれの方法で世界をもっと美しくするという使命を持っていることを教わったなら、彼らは自分自身を誇らしく感じられることだろう。
そして、目に見えるかたちや見えないかたちで、世界を美しくすることができるだろう。

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posted by Sachiko at 22:26 | Comment(4) | 絵本
2020年06月19日

「あおのじかん」

「あおのじかん」(イザベル・シムレール 文・絵)

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おひさまが しずみ
よるが やってくるまでの ひととき
あたりは あおい いろに そまる
― それが あおの じかん

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このように始まり、それからたくさんの青い色の生きものが紹介される。

頭の羽根がぴんと立っているアオカケス。
青く冷たい空気の中では、ホッキョクグマも青く見える。

珍しい青い生きものたち。
コバルトヤドクガエル、フサホロホロチョウ、モルフォチョウ、ブルーレーサー(青い蛇)...

青い花たち。
ヤグルマギク、ホタルブクロ、ワスレナグサ、スミレ....

青い鳥たちや、海の中の青い生きもの。

夜の色はだんだん濃い青になっていく。
ぐんじょういろのイトトンボが、ルリハツタケにとまったら、あおのじかんは、そろそろおしまい。


日没後の青い時間、空気が青インクを溶かし込んだような青に染まる。
その青がしだいに濃くなっていくのを見るのが好きだった。
冬は特に、雪がすばらしく澄んだ青になる。

自然界に、たぶん青い生きものはそう多くない。
花も、他の色に比べて青い花は少ない。
それだけに、いっそう不思議に映る。

私ができるなら遭遇したいと思っているのは、魅惑的な青いキノコ、「ソライロタケ」だ。
(↓写真左上、『世界の美しいきのこ』パイ・インターナショナル刊より)

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posted by Sachiko at 22:20 | Comment(2) | 絵本