思えばこれは一回でサラっと流してしまうのはもったいない名作だった。
少しおさらいすると、エミリーとシャーロット姉妹と人形たちの物語で、主人公のトチーは古い小さな木の人形だ。
人形たちはプランタガネット家という家族を作って楽しく暮らしている。
そこに、見た目は美しいマーチペーンという人形がやってきて、プランタガネット家に危機が訪れる。
姉のエミリーがすっかりマーチペーンに夢中になり、楽しかった人形たちの世界が台無しになってしまった。
妹のシャーロットは、そんなエミリーのやり方を改めようとしていた。
小さな人形のトチーは言う。
「エミリーは、考えつくほうよ。シャーロットがぼやぼやしている間に、エミリーがいろんなことを考えついて、どしどし実行してしまうのよ。
あの子のように先に立って進む者は、時にはきっと間違うことがあるわ。
後からくる者から見たら、『これは間違いだった、あれは間違いだった。』というのはかんたんでしょう。
あとからくる者には正しい道がわかるのよ。選ぶ必要がないから。
エミリーはよく間違ったものを選ぶわ。」
そして人形たちは、エミリーが間違いに気づくことを願い続ける。
人形たちは、子供たちに遊んでもらわなければ口をきくことも動くこともできない。
人形たちにできるのは、ただ願うことだけ。
そうして人形の家に大きな悲劇が起きたあとで、エミリーは元のエミリーに戻る。
そして、めったに何かを思いつくということのないシャーロットが、マーチペーンを博物館にあげてしまうことを思いついた....
先に立って進む者は間違える。後から行く者は、その間違いがわかる。人形トチーの言葉は深い。
時には先頭を行く間違えた者のあとを、大勢がそのままついて行ってしまうこともある。
エミリーは自分の間違いに気づいた。
自分が間違っていたことに気づいて改める、これは人間にとって難しいことのひとつだ。
特に、集団心理のようなものが暴走する時には。
大人の作品も多く書いているルーマー・ゴッデンは、子供の本を書くときに、特に子供向けに言葉を変えるようなことはしないと言った。
この点は、多くの優れた子どもの本の書き手たちはみんな同じように言っている。
いかにも「子ども向け」という本は私は好きではない。
幼い子どもへの配慮は必要だが、子どもは自分が表現できるレベルの言葉しか理解できないと思い込むのは、子ども時代をすっかり忘れてしまった大人の傲慢というものだ。
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「オリーブの森で語りあう」
と この本があったので
読むことができました。
子供の頃 お人形やぬいぐるみが
とても好きだったので
その時の感情を 思い出しながら
読みました。
どんどん物語の中に
吸い込まれていきました。
ものすごいお話でした。
トチーの言葉は すごい。
そして私は、子どもたちの素敵な伯母さんの
イニスフリーさんが大好きです。