2022年05月07日

「グリーングリーンの国から」

「グリーングリーンの国から」
(ケビン・クロスリー-ホランド作 / アラン・マークス絵)

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ある日、洞穴に逃げ込んだ仔羊を追っていた姉弟が、自分の国から遠く離れたところへさまよい出た。
そこで会った子供たちは顔も手足もグリーンではなく、森の鳥も野イチゴもグリーンではなかった。

言葉の通じない子どもたちに屋敷へ案内されたが、そこのお母さんもグリーンではない。
食べものも口に合わず、食べることができたのは、若者が持ってきたグリーンの豆だけ。

ふたりは家に帰ろうとしたが、帰り道は消え洞穴もなくなっていて、屋敷で過ごすほかなくなった。お母さんはふたりに彼らの言葉を教えようとした。

7日後、弟は病気になり、9日目に死んでしまった。
姉は屋敷に住み、言葉を覚えた。ガイという名の若者が毎朝グリーンの豆を持ってやってきた。

お母さんがごちそうを作ってみんなを招いた日、姉は自分のことを話しはじめる。

地面の下に在るグリーンの国から来たこと、そこでは誰もが、何もかもが、グリーン色をしていること。川の向こうの光りかがやく国では、弟が待っていること....

帰り道がみつからないまま時は流れた。
ガイは町のお祭りに少女を誘うが、グリーンの姿を見た人々は大騒ぎ。

その場から逃げ出した少女をガイが探しに来て、グリーンの国もここも、君の家は君の心の中にある、ここでいっしょに暮らしてほしいと言う。
屋敷ではみんながふたりを待っていた.....

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グリーンの子どもたちの話は、イギリスに古くから言い伝えられている伝説だそうだ。

12世紀のサフォーク地方の出来事を、13世紀初めにコギシャルのラルフとニューバラのウィリアムという二人の修道士が、それぞれの年代記に記録したことから今に伝えられたという。


妖精研究の第一人者であるキャサリン・ブリッグズの「イギリスの妖精」の中でもこの話に触れられている。

・・・サフォークで薄緑の肌をしたふたりの子どもが発見された。
男の子は死んでしまったが、女の子は生きのび、緑色の肌はしだいに色褪せた。

ふたりは薄明りに包まれた地下世界に住んでいて、ある日洞穴に迷い込み、太陽の光の中に出て気を失っていたところをつかまったという。
女の子は成人してから土地の男と結婚した・・・

ケルト文化では、緑色は死者の色で豆は死者の食物とされていたことから、地下の緑の国は死後の世界とも考えられる。


伝説が生まれた古い時代は、この世と異界との壁が薄く、それらは時折交じり合っていた。
近年、壁はふたたび薄くなってきているというが、一方で古い言い伝えや物語は急速に姿を消しつつある。

時代を超えて語り継がれる物語は、暮らしの伝承とともに、文化にとっての血液のようなものではないかと思う。
それは温度を持ち、文字通り人間の血肉となるのだ。
   
posted by Sachiko at 22:41 | Comment(2) | 絵本
この記事へのコメント
読みながら このおはなし どこかで
聞いたような 読んだような・・・
記憶があると思ったのですが
思い出せません
あれれ?(笑)
豆は 死者の植物とされていたのですね。
納豆を 食べると お腹の調子が良いのは
あちらと こちらのバランスが
整うからかなぁ
なんて思いました。
Posted by にゃん太郎 at 2022年05月14日 10:30
比較的よく知られた話らしいので、
イギリスの伝説が書かれた本などに
載っているのかもしれませんね。
なんとも不思議で魅力的な伝説です。
ちなみに私は納豆苦手...(>_<;
Posted by Sachiko at 2022年05月14日 22:30
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