「まほうつかいのノナばあさん」の続編で、「まほうつかいのノーナさま」シリーズの中の一冊。
手伝いの若者、のっぽのアンソニーもまた登場する。

イタリアのカラブリアにある小さな町では、魔法使いのノーナさまが毎年クリスマスイブに町じゅうの人を招いてパーティをすることになっている。
手伝いのアンソニーも、次々と用事を言いつけられて大忙し。
魔法を使えばいいのに、と言うが、ノーナさまはクリスマスには魔法を使わないことになっているのだ。
クリスマスの頃には自然と、魔法がはたらくものだからね、とノーナさまは言う。
忙しく日は過ぎて、とうとうクリスマスイブの朝になり、アンソニーはまたたくさんの買い物を言いつけられた。
ノーナさまは家を飾りつけて待っていたが、アンソニーは戻ってこない。
日が沈むころ、何も持たないでアンソニーが帰ってきた。
町の広場で人形劇を見ていたアンソニーは、買い物をすっかり忘れていたという。
ノーナさまは、今夜のパーティは取りやめだと町の人たちに伝えるために、アンソニーを使いに出した。
真夜中のミサを知らせる鐘が鳴り、ノーナさまは寂しい気もちで丘を下りて教会へ行った。
中では、パーティがないことにがっかりしている人々のささやきが聞こえた。
教会の隅に飾られた生誕の人形たちを見ながら、ノーナさまはつぶやいた。
「イエスさま、あなたがお生まれになった夜は、ほんとはこんなににぎやかじゃなかった。おかあさまとおとうさまだけの、さびしいお誕生日だったのですね....」
ノーナさまは教会を出て、丘の家に帰っていった。
ドアを開けたとたん・・・・
「メリークリスマス、ノーナさま!」
そこには町じゅうの人たちが、パーティのごちそうを用意して待っていた。
アンソニーが計画したことだったのだ。
「クリスマスのころには、しぜんとまほうがはたらくものですからね」
-------------
クリスマスの頃にはしぜんと魔法がはたらくものだから、魔法使いも魔法を使わない・・・・なんと素敵な考えだ。
賑やかなクリスマスも、静かなクリスマスも、クリスマスには魔法さえも超えた特別なちからがはたらく。
なんだかとても大きく、天と地とすべての人を包み込むようだ。
今年もアドベントに入り、この季節だけの聖夜の気分に静かに耳を澄ませば、もう魔法ははたらいている。