マリア・グリーペ「森の少女ローエラ」より。
白日夢から醒めたローエラは、パパのことを冷静に考え始めた。
こうあってほしいという自分の心に惑わされたことが、今ではわかる。すべては幻だった....
あの晩家が恋しいと泣いていたモナは、もうけろりとしている。でも、モナには頼る人が誰もいない。
ローエラは今になってアディナおばさんのありがたみがわかった。
それでおばさんに、今学期が終わったらすぐに帰ると手紙を書き、森の家の気がかりなことなどを尋ねた。
すぐに返事が来て、すべては無事だとわかった。
町はもうローエラをつなぎとめる力を持たない。
町暮らしで失われかけた自分の力が戻ってくるのを、ローエラは感じていた。
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ローエラが気にかけていたのは、懐かしい森の家と、周りの景色のことだった。
パパ・ペッレリンはまだ立っている?花は咲いた?ライラックはつぼみをつけている?リンゴの木はどうなった?ポーチの脇のアオイは?......
町暮らしで失われかけた力は、どのようなものだっただろう。
町にあるものはすべて何かの代用品のように、ローエラには思えたのだ。
生き生きとした暮らしの代わりの刺激、喜びの代わりの娯楽、気を紛らわすための騒音、そして人はすれ違っても挨拶さえしない。
森は人を自由にし、本質につなぎとめる。森にあるものはすべて生きているか、かつて生きていたもので、ほんものだ。
森に帰ることが決まったローエラからは、内から泉のように湧き出る生命の力がよみがえってくるのが感じられる。
2021年03月29日
帰郷の準備
posted by Sachiko at 22:09
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