「ANAM CARA -- A Book of CELTIC WISDOM」(John O'Donohue)の中に、聖ブリギットについての美しい記述がある。
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聖ブリギットは、ケルトの女神であると同時にキリスト教の聖人でもあった。ブリギットは自身の内で、ごく自然に、ふたつの世界の両方に焦点を当てていた。
古い自然宗教の世界とキリスト教の世界は、アイルランド人の心においては対立することなく、むしろ互いに親密な関係にあった。
これは記憶の炉端のための美しい祈りである。
女神ブリギット 我らを抱きたまえ
子羊の聖女 我らを護りたまえ
炉床の守護者 我らに火を与え
あなたの炉端に 我らを集わせ
我らを記憶へと連れ戻したまえ
我らの母の中の母
力強い祖先の母よ
その手で我らを導き
炉の火を燃やす
術を伝えたまえ
燃える火を絶やさず
炎を保ち
我らの手の上に御手を
御手の内に我らを
昼も夜も
あかりを灯しつづけるために
ブリギットのマントの下
我らの中の記憶
ブリギットの加護は
危害、無知、無情から我らを護る
昼も夜も
明け方から闇夜まで
闇夜から明け方まで
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インボルクは火と光の祭りであり、「胎の中」という意味があるそうだ。光が戻ってきて、大地の中で春が胎動を始める季節である。
ブリギットは大地を歩き、眠っている種を起こす。
地方によってはこの日にクリスマスツリーを片付け、クリスマスシーズンを終えるというところもある。
今回は濃い十二夜を過ごしたので、エピファニーを迎えて十二夜が明けたとき、それまでの聖夜の気分から抜けて、はっきりと空気が変わったのを感じた。
ブリギットの祭りは浄化の時とされる。
古い文化では闇が不浄とみなされていて、光が強くなりはじめる2月は、暗い時を洗い清める儀式が行われた。
キリスト教ではこれが、聖母マリアの浄めの祝日となった。
自然のサイクルと人々の暮らしが強く結びついていた時代の祝祭には、力強い土の香りがあり、祈りもまた現実的なはたらきを持っていたことだろう。
日本では明日は節分。一部の地方の風習だった恵方巻が商業主義に乗って全国区になったり、祝祭の力は悲しいほど薄いものになってしまった。
我が家では恵方巻は食べない。
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〈星の子〉 https://fairyhillart.net
