2020年07月18日

うたう魚

グリーン・ノウ物語第3巻「グリーン・ノウの川」より。

川は大雨が降るとすぐに氾濫するので、このあたりの川沿いには家や工場が建っていない。
グリーン・ノウ屋敷は、洪水を避けられるほどの高さがある島にあるのだ。

三人の子どもたちは、屋根裏部屋の窓から身を乗り出して川を眺めた。
川にはたくさんの島があり、上流には水門がある。三人は何一つ見落とすまいと、窓から窓へと駆け回る。

アイダは、川や雲や地面がピンの目の中に小さく映っているのを見る。
ピンは言った。

「・・・地面は、何キロも何キロもひろがって、あちこちに、森や、イグサや、滝や、水車が見え、夜鳴き鳥がおり、鐘があり、歌をうたう魚がいる。」

「すてきだわ、そういうの・・・ピン、うたう魚がいるっていうの、ほんとうなの?それとも、ただ、そう考えているだけ?」

するとオスカーが言った。

「おとうさんがよく言ってたけど、この世の中でほんとうのものはただ人間の考えだけなんだって。どんなものでも、だれかがそれを考えなかったら、ぜんぜんないのと同じなんだ。考えというものは、鉄砲でも撃ち殺せないものだ、ってね。

おとうさんはそう言ったために、ロシア人に撃ち殺されてしまった。でもおとうさんのその考えは、撃ち殺されていないんだ。だって今、ぼくがその考えをうけついで、考えてるんだもの。
だから、ピンがうたう魚がいるというのなら、なんとかしてきいてみようよ。そう思わない?」


わずかな間に、三人はすでに深い友情で結びついたように見える。これもグリーン・ノウの魔法かもしれなかった。

鳥が歌うのなら、魚も歌うことはないだろうか、魚独特のやり方で。
そういえば、水の精は歌う。セイレーンとかローレライとか。そして水の精は魚の姿をとることができる....


翌朝、朝食をすませた三人は、庭のはずれのボート小屋で見つけたカヌーで川に漕ぎ出す。
彼らは川のどんなものも見逃しはしなかった。

アイダが、目を閉じて聞こえる音全部を言ってみることを提案した。
水の音、生きものがたてる音、草木が擦れる音、泡の音、ありとあらゆる音、音...

「ねえ・・いまきこえる音、うたう魚かもしれないわよ。」

五感を全開にして、子どもたちは川を味わう。
だれでも、注意深く感覚を研ぎ澄まして自らの器を差し出した分だけ、世界は繊細で多様で美しい姿を見せてくれる。

最初の朝の川遊びがすでにこんなに豊かなのだから、このあと、どれほどの冒険が待っていることか....
  
posted by Sachiko at 22:01 | Comment(2) | ルーシー・M・ボストン
この記事へのコメント
夕方のお勝手から聞こえる
さまざまな音
あれは好きだなぁ

もちろん
自然の音は
別格の美しさ

魚の歌

雪の降りつもる音

星の瞬く音
のように
聴こえないけれど
聴こえる
という種類の音
なのでしょうね


Posted by しゅてるん at 2020年07月19日 10:20
うたう魚、
うたう木々....

あらゆる存在は、それ自身の歌を
歌っているのでしょう。

聴こえる歌も、聴こえない歌も。
Posted by Sachiko at 2020年07月19日 21:59
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