「NATURE BEINGS -encounters with friends of humanity-」(Margot Ruis著)より。
ブナのディーバが語った創造の神話は次のようなものだった。
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妖精たちはどのように地球にやってきて木の精になったのかを、私は父祖たちから伝え聞きました。
一本の古い木があり、幹は山のように大きく、根は谷のように拡がって、枝は太陽や月や星にまで伸びていました。
枝はそれぞれに、異なる葉や果実をつけ、木にやってくる生きものたちは皆幸せに満ちていました。
ある日、高い枝に星が引っかかりました。
星は、優しく美しい存在たちの住処でもありました。
彼らは自由であるのが常でしたが、星が枝に引っかかっていたので、そこから去ることができませんでした。
それで、星の存在たちは地球にとどまり、妖精と呼ばれるようになりました。妖精たちは一本の古い木のそれぞれの枝に分かれて住み始めました。
木の実が育って木になり、やがて無数の木が森を作りました。今では、星にはあまり多くの妖精が残っていませんでした
どの木も自分の妖精を欲しがったので、妖精たちはどうしたらよいかを話し合いました。
妖精たちは木をとても愛し、女性と男性の妖精が心の中の愛と深く結びついたとき、新しい妖精が生まれました。
木のために良いことをしようという愛情と憧れとが、こうして新しい妖精を生み出したのです。
妖精はすぐにたくさん増えて、木がひとりぼっちでいることはなくなり、すべての木が妖精によってとても幸せになりました。
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天にまで届いている大きな木は、宇宙樹ユグドラシルを思わせる。
シュタイナーの妖精論によれば、天界の天使たちから分かれて自然界に降りたのが妖精たちだと言われている。
ブナのディーバが語った物語も、木の立場からそのことをなぞっているように見える。
地上で動物や植物という違った姿をまとったものたちも、物質体を持たない妖精たちも、遥かな神話の源では人間の兄弟姉妹だった。
神話を失って「この世」のみに生きるとき、人間は孤独になり始める。(※文学としての神話や、特定の民族の神話を指しているのではない)
神話は天と地を繋ぎ、かすかな天の思い出を響かせる。
人間も遠い昔に地上に降りてきた星の子だったことを思いだせるように。
2020年06月08日
一本の古い木の物語
posted by Sachiko at 21:33
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