2020年02月28日

ロークの魔法学院

アーシュラ・K・ル=グウィン「いまファンタジーにできること」の中に、こんなエピソードがある。

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ある時期、みんながわたしにしきりにこう言っていた。すばらしい本がある。絶対読むべきだ。魔法使いの学校の話で、すごく独創的だ。こういうのは今までになかった、と。

初めてその言葉を聞いた時は、白状すると、わたし自身が書いた『影との戦い』を読めと言われているのだと思った。この本には魔法使いの学校のことが出てくる。そして、1969年の刊行以来、版を重ねている。

だがそれはおめでたい勘違いで、ハリーについての話を延々と聞かされる羽目になった。

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ル=グウィンは、ハリーの本を新しくて独創的だと讃えた批評家たちに対して「彼らはこれまでファンタジーを読んでいないか、読み方を知らない」と辛口だ。

私はハリーの本を読んでいないので、あまり何も言えない。
映画のほうは、テレビで繰り返し放映されたのをその度に見たはずなのだが....シリーズの1作目以外はほとんど憶えていない。
(途中で何が何だか、誰と誰が何のために戦っているのかわからなくなってしまったのだ。それに登場人物の長くて聞き慣れない名前を覚えられなかった...)


なので、ホグワーツではなくローク島にある魔法学院のことを書こうと思う。ゲド戦記シリーズの1巻『影との戦い』には、魔法使いを育てる学院が出てくる。
ゲドが学院の門をくぐるには、自らの「真(まこと)の名」を告げなければならなかった。

ゲド戦記の魔法について、敢えてひとことで言えば、私にとっては「腑に落ちる」ということだった。
そこでの魔法は単に、杖を振って呪文を唱えれば何かが起こったり、呪文を間違えるとおかしな結果になる、というだけではない。

「名」そして「言葉」、これらがその本質においてどれほどの力を持っているか、その根源がどこから来ているのか、ということが腑に落ちる形で描かれているからだ。

例えば魔法の術を使って石ころを宝石に見せかけることはできるが、本当の宝石にするためには、それが持っている真の名を変えなければならない。
だがそれは、宇宙そのものを変えて、宇宙の均衡を揺るがすことになる....

魔法修行にも華々しいところはなく、ひたすら“太古の言葉”に由来する、さまざまなものの「真の名」を知っていく。その作業にはきりがなかった。

事物の背後にある揺るがない真実、それがそれ自身であるところの「真の名」、宇宙の均衡....
これらはアースシーというファンタジー世界の姿を借りているが、現実のこの世界の真実そのものに見える。

人類が宇宙の均衡さえも揺るがしかけているこの時代、多くの人が、自分自身の「真の名」を見失い、それを探しあぐねてもがいているのではないか、と思えてくる。
   
posted by Sachiko at 21:49 | Comment(2) | ファンタジー
この記事へのコメント
ハリー

全巻読みましたし
映画も全部みました

あれは
エンターテイメント
と思います。

ユニクロの服

オーダーメイドの服
くらい
そもそもの次元が
異なるので
比較のしようがない
という感じでしょうかね・・

Posted by しゅてるん at 2020年03月06日 08:16
ハリーの本が巷で大騒ぎになっていた頃、
読んだ友だちに「ハリー、どうだった?」と聞くと、
「...娯楽、だね。指輪やナルニアやゲドとは、根本的に何かが違う」
と言っていました。

予想通りの答えでした。
そもそも、真正のファンタジーが、マスコミも巻き込んで
世間で大騒ぎになるとは考えられなかったので....
Posted by Sachiko at 2020年03月06日 21:25
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