2019年07月30日

水妖伝説・2

水の精に捕まって引きずり込まれたいような暑い日々、「ドイツ伝説集」から、水の精の伝説を幾つか拾ってみる。


水の精と農夫

水の精の外見は普通の人と変わらないが、歯をむき出すと緑色の歯が見えるところが違っている(※)。
水の精はある農夫と親しくしていて、ある時、下のほうにある自分の家に来るように誘った。水の底に着いてみると、飾り立てられた豪奢な宮殿があった。

ある小部屋にさかさに並んでいる壺を見て、農夫はこれは何かと訊くと、水の精は「溺れて死んだ者たちの魂です」と答えた。

その後農夫は水の精の留守をうかがって水底の邸に入り、壺を全部ひっくり返すと溺死者の霊魂が上のほうにゆらゆらと昇り、ついに水から出て救いを得た。

(※)女の水の精は美しいが、男は尖った緑色の歯をしている。それで女の水妖は美しい人間の漁師に恋して水の中に引き込もうとする、という伝説は各地にある。


水妖と粉屋の小僧

粉屋の小僧が二人、川のふちを歩いていた。ひとりが川を見ると、女の水妖が水の上に座って髪を梳いていた。小僧が鉄砲で狙いを定めた瞬間、女は川に飛び込んで、何かの合図をしたかと思うとそのまま消えた。先を歩いていた小僧は何も知らず、後から来た仲間から聞いて知った。それから三日のち、始めの小僧は水浴びしようと川に入って溺死した。


川への生贄

ライプツィヒの近郊、エルスター河がプライセ河に注ぐあたりの水流は油断がならない。河は毎年、人身御供を一人ずつ要求する。事実、夏になると決まって人が一人溺れ死ぬが、これは水妖が水底へ引き込むと信じられている。誰かが溺死する前には必ず水妖たちが水の上で踊るという。


エルベの乙女

乙女は普通の娘と変わらなく見えたが、白い前掛けの端がいつも濡れていて、水から上がってきたことを示していた。
肉屋の若者が乙女に恋をして、あるとき一緒に水の中へ入っていった。恋仲の二人に手を差し伸べる漁夫がいて、岸で見張りをしていた。

乙女は水に入る前に漁夫に言った。
「リンゴがのったお皿が水の底から上がってきたらうまくいった徴です。その他のものだったら駄目だったと思ってください。」

やがて水の底から一条の赤い光が射した。それは花婿が乙女の縁者のめがねに適わなくて殺されてしまった徴であった。


このような伝説の多くからは、かつて信じられ、語り伝えられ、畏れられていたものが持つ不思議な重みを感じる。
古い伝説やメルヒェンから受ける、深い独特の気分を表わす適切な言葉がみつからない。これもまた、現代では失われてしまった言葉なのかと思う。
  
posted by Sachiko at 21:34 | Comment(2) | 神話・伝説
この記事へのコメント
お暑うございます。
こんなときは
やはり水の精の話で
涼みたいものですね。

コメントがわりに
「アトレーユの旅」に
記事をアップしました。
ご覧くださいませ〜。
Posted by しゅてるん at 2019年07月31日 09:40
今夜も熱帯夜...
水の精ならぬ、火の精サラマンダーが
巨大化しているようですね(>_<;
Posted by Sachiko at 2019年07月31日 22:17
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