2019年02月04日

「水仙月の四日」

宮澤賢治の「水仙月の四日」、一番好きな短編だ。
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ひとりの子どもが、赤い毛布にくるまって、しきりに“カリメラ”のことを考えながら、大きな象の頭のかたちをした、雪丘のすそを、せかせかうちのほうへ急いでおりました。

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雪狼(ゆきおいの)の後ろから、三角帽子をかぶった雪童子(ゆきわらす)が歩いてくる。

 カシオピイヤ、
 もう水仙が咲きだすぞ
 おまえのガラスの水車
 きっきとまわせ

 アンドロメダ
 あざみの花がもう咲くぞ
 おまえのランプのアルコール
 しゅうしゅと噴かせ

雪童子は、やどりぎの枝を子どもに投げつける。子どもは驚いてあたりを見まわすが、やどりぎの枝を持って、また歩き出す。

やがて風と雪がはげしくなり、雪婆んごがやってきた。
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「…さあしっかりやっておくれ。きょうはここらは水仙月の四日だよ。さあしっかりさ、ひゅう。」

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水仙月とは何月のことか、雪が吹き荒れているのだから2月かと思っていたが、3月かもしれない。東北で水仙が咲くのはいつだろう。
「ここらじゃ水仙月の四日だよ」.....どこか異世界での月の呼び名のようだ。

雪婆んごは容赦なく雪を降らすことを命じる。雪童子は、泣いている子どもの声を聞いた。雪童子は雪婆んごにわからないように、子どもを助けようとする。

「だまってうつむけに倒れておいで、きょうはそんなに寒くないんだから凍えやしない。」
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雪婆んごがやってきました。その裂けたように紫な口もとがった歯もぼんやり見えました。

「おや、おかしな子がいるね、そうそう、こっちへとっておしまい。水仙月の四日だもの、ひとりやふたりとったっていいんだよ。」

「ええ、そうです。さあ、死んでしまえ。」雪童子はわざとひどくぶっつかりながらまたそっと言いました。

「倒れているんだよ。動いちゃいけない。動いちゃいけないったら。」

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雪童子は子どもに赤い毛布をすっかりかけてやり、上からたくさん雪をかぶせた。雪婆んごは風の中で叫び、雪は夜じゅう降りに降った。
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雪童子らは、めいめい自分の狼をつれて、はじめてお互い挨拶しました。
「ずいぶんひどかったね。」
「ああ。」
「こんどはいつ会うだろう。」
「いつだろうねえ、しかしことしじゅうに、もう二へんぐらいのもんだろう。」
「早くいっしょに北へ帰りたいね。」
「ああ。」
「さっき子どもがひとり死んだな。」
「大丈夫だよ。眠ってるんだ。あしたあすこへぼくしるしをつけておくから。」

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朝、雪童子は子どもが埋まっているところへ行き、雪狼があたりの雪を蹴散らした。村のほうから毛皮を着た人が急いでやって来た。
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「おとうさんが来たよ。もう眼をおさまし。」雪童子はうしろの丘にかけあがって一本の雪けむりをたてながら叫びました。子どもはちらっとうごいたようでした。そして毛皮の人は一生けん命走ってきました。

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吹雪を体験できる地域に住んでいれば、雪と風が吹き荒れるようすがリアルに浮かぶことだろう。
「雪婆んごの、ぼやぼやつめたい白髪は、雪と風との中で渦になりました。」

雪童子は、その口調から、雪の中を行く子どもより少し大きい少年のように見える。
この雪童子というのは何者だろうかと、ずっと思っていた。
元々異界の妖精なのか、それとも、いつかある年の水仙月の四日に、向こう側に“とられて”しまった子どもたちなのだろうか...と。

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posted by Sachiko at 22:00 | Comment(2) | 宮澤賢治
この記事へのコメント
「ひかりのすあし」
が好きです。
このおはなしも
やはり雪の季節の
おはなしです。

今週末は
ますます寒く
なるようですね!
Posted by しゅてるん at 2019年02月05日 07:20
ひかりの素足....怖くて、美しく、悲しい。
ほんの少し、アーダルベルト・シュティフターの「水晶」を思い起こします。
「水晶」では、子供たちはふたりとも助かってハッピーエンドですが。
雪の降りしきる場所は、異世界との壁が薄いようです...
Posted by Sachiko at 2019年02月05日 21:30
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