マリア・グリーペ「鳴りひびく鐘の時代に」より。
ヘルメル王は占星術師たちに囲まれ、星座のお告げを聞き集めた。話は思いがけない方向に発展していた。アンナ王妃にとってはとんでもない話だったが、これで多くのことが解決しそうに思われた。
ヘルメル王から促される前に、アルヴィドは自ら退位の意思を告げた。
ヘルメル王から聞かされた話にヘルゲは驚いた。
…こんなことにまで星が口出しするとは.....この話はヘルメル王と、今は天国にいる母さんだけにしか、かかわりがなさそうなのに....
エリシフの運命は当然アルヴィドに結びついていると思ったのは誤りだったと、ヘルメル王は言った。
儀式の間で、アルヴィドは臣下たちを忠誠から解き、王の象徴である剣や王笏を外した。そして最後に王冠を頭からはずし、ヘルゲの頭にかぶせた。
みんなの喜びの波が高まってヘルゲを取り巻いていた。
アルヴィドはもう注目の的ではなくなっていた。役目は終わった...
王国はうまくやって行けるだろう。
物語は、アルヴィドとエンゲルケの静かなシーンで終わる。ふたりとも、この先どうなるのか何のあてもないけれど.....
重厚で奥深い物語なので、こんなふうに表面を撫でて終わるのはしのびない気もする。
太陽や月や星々が、今とは違った意味を持って人々を照らしていた時代の香り。
アルヴィドを引きつけてやまなかったのは、永遠の生命を持つ、目には見えない高い真実の世界だった。
彼は、太陽をあこがれてやまない月の気持ちが、痛いほどよくわかった。月のあこがれは、アルヴィドの魂が永遠をあこがれるのと同じはげしさを、もっているにちがいなかった。
人間は、太陽型と月型に分かれるらしい。さらに、月型には二種類あって、太陽に憧れる月と、耽美、頽廃の世界に沈んでいく月とに分かれるのだとか。
これは、満ちていく月と、欠けていく月との気分の違いに似ているかもしれない。
明らかに太陽型のヘルゲとエリシフ、月型のアルヴィドとエンゲルケ。どちらにしても、この若者たちは、地上で眠る人間たちを超えたところで輝きを放っていた。
2019年01月28日
王冠
posted by Sachiko at 22:07
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| マリア・グリーペの作品
空気感
どんなだったろうか?
とりあえず
100年前の日本
それから
縄文時代
を
そっと覗いてみたい。
太陽に憧れる月種族
と思われまする。
太陽に憧れる月種族、どうも少数種族のような気が...