2018年12月20日

禁煙先生

ケストナー「飛ぶ教室」より。

その人は、菜園の中の、廃車になった禁煙車両に住んでいる。
生徒たちは、舎監のベク先生に言いにくいことや、正と不正を区別するのが難しいような場合、禁煙先生に知恵を借りに行く。

禁煙先生のほんとうの名前を誰も知らない。
噂では、毎晩町はずれの料理店でピアノを弾いているということだった。少年たちにとってはそれはどうでもいいことで、禁煙先生が立派な賢い人だというのは確かだった。

禁煙先生は、生徒同士の捕虜救出作戦にも、面白がって知恵をさずけてくれるのだ。
少年たちの話から、正義先生の本名を知ったとき、禁煙先生はかすかにびくっとした。

ベク先生の少年時代の話を聞いた翌日、昼食後に、ヨーニーとマルティンは、ベク先生を散歩に連れ出し、たずねた。

「お友だちは、なにを職業にしていたんですか」
「医者だった。だから妻や子を助けることができなかったのが、ひどく心にこたえたのだろう...」

菜園のそばを通って客車のところまで来ると、ヨーニーは先生に、この中に住んでいる人に会ってもらいたい、と言った。

こうして禁煙先生とベク先生は再会し、マルティンとヨーニーはそっと立ち去った。ふたりは菜園を走り抜け、垣根を乗り越える前に、手を握りあった。

…それは無言の約束をしているようでした。ことばではまったくいいあらわせない約束を。(本文より)


その後、ベク先生は料理店に禁煙先生を訪ね、学校の老校医の後継者に推薦してもらうことを提案し、受け入れられた。

友情は、現代において失われてしまった美しいもののひとつだ、というようなことをシュタイナーが言っていた。
確かに、19世紀文学などで描かれている友情は、まるで熱い恋愛のようで、現代人の感覚からすると引いてしまうくらいだ。
シュタイナーが「現代人の魂は冷えきってしまっている」と言った時代から、すでに100年経っている。
 
posted by Sachiko at 22:13 | Comment(2) | 児童文学
この記事へのコメント
現代においては
なにもしなければ
魂は20歳までで
成長が止まってしまう
そうですね。

魂の未熟化は
どんどん進み
やがて14歳に
なってしまうとか。

冷え切った
魂を
あたため
てくれるのは
友情や愛情
なのでしょうね。



Posted by しゅてるん at 2018年12月21日 06:44
テクノロジーばかりが暴走して、それを扱うのは未熟な子ども
という状況....
その一方で、老成した魂が降りてきたような
進化した子どもたちも生まれているようです。
地球はどこへ....
Posted by Sachiko at 2018年12月21日 21:13
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