2020年10月09日

家路

ついに最低気温が一ケタになり、来週には一気に寒くなりそうだ。
秋の夕刻にキャンドルを灯したときの独特の気分に、ふと、しばらく離れていたあの場所に思いを馳せる。
帰りたいと思う場所、ムーミン谷へ。

スナフキンが旅立ち、ムーミンたちが冬眠の準備をする時期も近づいてきた。
特にどの物語を追うのでもなく、ムーミン谷をさまよってみる。

森を抜け、川べりを歩き、橋を渡って、ムーミン屋敷が見えるところまで。
やはり、冬眠から覚めた春は外へ飛び出す季節であり、夕刻の灯りが誘う秋は、家に帰る季節なのだ。


“ほんとうの家”とは、ほんものの暮らしが営まれている場所だ。
ムーミン屋敷やグリーン・ノウ屋敷、ホビットの家...特に、すべてを見届けて家路についたサム・ギャムジーを迎えた小さな家は、何と家らしかったことだろう。

ほんとうの家は生きものだ。
生きた自然の風が通り、生きた火が燃えている家。
生きた水、生きた土の香り...

つまり、現代の、特に都市では、ほんものの家を持つのは難しい(私は、得体のしれない機械に話しかけてカーテンを開けてもらうような生活はまっぴらだ)。

けれど帰りたいほんとうの家は、この世界の家ですらないのかもしれない。
家という名で象徴的に呼ばれる、この次元を超えたある“状態”のような....


「ムーミン谷の十一月」の後書きにはこのように書かれている。

『・・・ムーミン谷は、けっしてユートピアでもないし、おとぎの国でもありません。
私たちが生きている生々しい現実世界と共通することがたくさんあるのです。それにもかかわらず、ムーミン谷には、どんな強烈な個性の持ち主であっても、だれもが、自分らしく、自由に生きられる世界があります・・・』

それだからだろうか。生活に興味があるとは思えず、自由と孤独と旅を愛するスナフキンでさえ、必ずムーミン谷に帰ってくる。
    
posted by Sachiko at 22:32 | Comment(2) | ムーミン谷