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ルピナスさんは、小さいアリスの大おばさんで、丘の上に住んでいます。
ルピナスさんも同じアリスという名前で、アリスのおじいさんは大きな船でアメリカに渡ってきたのです。
アリスは、自分も大きくなったら遠い国に行って、それから海辺の町に住むと言いました。
おじいさんはアリスに言いました。
「もうひとつしなくてはならないことがあるぞ。
世の中を、もっと美しくするために、なにかしてもらいたいのだよ。」
アリスはそうすると約束しました。
大きくなってミス・ランフィアスと呼ばれるようになったアリスは、遠い国々を旅しましたが、あるとき背中を傷めてしまい、旅をおしまいにして海辺の家に落ちつきました。
「世の中をもっと美しくしなくてはならないわね」
あるとき、丘のむこうにルピナスの花が咲き乱れているのを見ました。庭から、風で種が運ばれていったのです。
それからミス・ランフィアスは、たくさんのルピナスの種を村のあちこちにまいて歩きました。
次の春、村じゅうがルピナスの花であふれました。
すっかり歳をとったミス・ランフィアスは、ルピナスさんと呼ばれるようになりました。
ルピナスさんは、小さいアリスに言いました。
「世の中をもっと美しくするために、なにかしなくては」
「いいわ」小さなアリスは約束しました。
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美しい絵本にとって余計なことを先に言ってしまうと、ルピナスはマメ科でとても繫殖力が強い。野原や道端で野生化しているのをよく見かける。
実は危険外来種なので、そこらに種を蒔いてはいけない。
本題はそこではなく、「世の中をもっと美しくするために」という話だった。
人生における望みや課題は人それぞれだけれど、このひとつの約束は、実はすべての人が生まれるときに持ってきているものではないのだろうか。
自分が何をしにこの世にやってきたのか....現代社会のシステムは、そのようなことを考えさせないようにできているらしい。
でも時代は変わる。
子どもたちが早い時期に、それぞれの方法で世界をもっと美しくするという使命を持っていることを教わったなら、彼らは自分自身を誇らしく感じられることだろう。
そして、目に見えるかたちや見えないかたちで、世界を美しくすることができるだろう。
