2020年05月18日

金色のパンとはちみつ

「モモ」(ミヒャエル・エンデ)より。

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金褐色にパリッと焼けた巻きパンが小さなかごにならんでいて、金色のバターの入った小鉢と、まるで液体の金のように見えるはちみつの入ったつぼもあります。
マイスター・ホラは、ずんぐりしたポットから両方の茶わんにチョコレートをついでから、身ぶりよろしく食事をすすめました。
「どうぞ、小さなお客さん、たくさん召しあがってください。」
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マイスター・ホラはそういうモモをにこやかにながめていました。じゃましないように気をきかせて、はじめのうちはなにも話しかけませんでした。
このお客が長い長い年月の飢えをいまいやしているのだということが、わかっていたのです。

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モモがマイスター・ホラの〈どこにもない家〉に着くと、食事のしたくが整っていた。モモはすっかりこの食事に没頭する。

長い長い年月の飢え....
これは肉体的な飢えではないだろう。
モモはまだ子どもで、地上でさほど長い年月を生きていない。

誰にとっても、ほんとうの人生の目的は、この地上の人生には収まりきらないようにできているのだそうだ。

そのため、よほど地上生活に埋没しているのでないかぎり、どこかに地上で得られるものだけでは埋めることのできない空洞ができる。

マイスター・ホラの腕に抱かれて、モモは咲いては散る時間の花を見る。その香りはモモに、何かわからないけれどずっと憧れつづけてきたものを思い起こさせた。

モモの飢えは、ふつうの人が来ることのできないマイスター・ホラの家で満たされる。
金色のパンとはちみつとバター、熱いチョコレートの、簡素なのに特別な食事によって。
  
posted by Sachiko at 22:39 | Comment(2) | ファンタジー