2019年11月10日

美しきもの見し人は

 美しきもの見し人は
 はや死の手にぞわたされつ
 世のいそしみにかなわねば
 されど死を見てふるうべし
 美しきもの見し人は

文語体訳のイメージからか、なぜかずっとフランス詩だと思っていたのだが、プラーテンの詩の一節だと判明した。
最初の2行が記憶の隅から時折浮かび上がってくることがあった。


「芸術とは彼岸にもなければ、此岸にもない。その中間にあるのだ。」(ミヒャエル・エンデ)

「美は、他の世界から我々の世界の中に輝き入るいわば光であり、それによってあらゆる事物の意味を変容させる。美の本質は秘密に満ちた、奇跡的なものだ。この世界のありふれたものがその光のなかで別の現実を開示する。」(ミヒャエル・エンデ)

この一文が見事に語るように、この世界のありふれたものや小さなもの --- 葉っぱ一枚、水の一滴さえも、美という光を通ってまさしくこの世を超えた姿に変容する。見る側がその光を捉えることができれば....

美を見る者は、彼岸と此岸のあいだに架かる橋の上に立つ。どちらにも属さない危うい橋は、この世で安泰に暮らしたければ渡らないほうがいいかもしれない橋。
けれど彼岸と此岸は一対のもので、もうひとつの世界から輝き入る光なしには、此岸は片目が知覚する世界のように平板なものにしか見えないだろう。


一年で最も暗い11月は、死者の月と呼ばれる。
北欧ではこの時期に鬱の発症率が高くなると言われているように、高緯度地域の11月は暗い。彼岸へ誘う力がはたらく季節だ。

日照時間がさらに短くなるはずの12月に入ると、雪があるためかクリスマスの気分のためか、突如不思議な明るさが戻ってくる。
あと3週間でアドベントが始まる。
  
posted by Sachiko at 22:19 | Comment(2) | 言の葉