
木から落ちたばかりのみずみずしさを残し、指で押すとオイルが滲み出てきて、すばらしくいい香りがする。
スッキリとした針葉樹の香りは、これぞ森の香りだ。
香りのエルフたちがどのようにして植物それぞれの香りを創り出しているのか、これもまた不思議なはたらきだ。
造り酒屋では新酒ができると軒先に杉玉を飾る。
新酒と針葉樹は、世界的に何か共通の意味があるのか詳細はわからないが、ウィーンのホイリゲ(ワイン酒場)でも、新酒が入ったしるしにモミなどの針葉樹の束を入り口に飾っていた。
杉ぼっくりを拾った近くでは、小さな若いエゾリスが数匹、木を登ったり下りたりしていたし、黒い羽根と赤いお腹のヤマガラも姿を見せた。
2週間ほど前にはまだ緑色だったオオウバユリの莢は、すっかり茶色になってはじけていた。
