2019年09月22日

高みの星

昨日の続きで、破壊力よりもさらに高い領域というとき、思い起こすのはこの物語だ。

『指輪物語』の中で、滅びの火の山に向かう絶望的な旅の途中、サムは白い星がひとつ雲のあいだから瞬いているのを見る。
その美しさは彼の心を打ち、望みが戻ってきた。

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・・・結局はかの大いなる影もつかの間の些々たる一事象にすぎないのではないかという考えが、まるで透き通った冷たい一條の光のように彼を貫いたからです。
かの影の達しえぬところに光と高貴な美が永遠に存在しているのです。

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悪というものは、理由があってこの物質次元でのみそのような姿をしているのであり、別の次元ではまた別様の在り方をしているのだという。

サムは絶望感が極みに達したときにも、最後の瞬間それを希望に転換させる。
指輪が滅びのき裂に投じられたあと、山道を下りていくフロドとサムのほうへ火山から流れる火が迫っていき、まもなくのみ込まれそうになる。
二人が倒れたとき、大鷲がやってきて彼らを運び去った。

サムが目を覚ました時、頭上にはブナの大枝が揺れ、若葉を通して陽の光が射しこみ、大気はかんばしい香りに満ちていた。


黙示録では地上世界は火で滅びることになっているが、結局はこのサムの物語のようなことなのではないか....

滅びの火の上には永遠の星があり、火の中で倒れたはずが、目を覚ましたら美しい緑の野にいるのではないか、と思うのは、希望的観測に過ぎるだろうか。
  
posted by Sachiko at 22:17 | Comment(2) | ファンタジー