
花が終わったあと、うまくいけば幾つかの実が房状に付くのだが、今年はたったひとつ。
このひと粒が美しい。つややかに輝く赤い実。
名前の通りハニーサックルの蜜は甘いが、一見おいしそうに見える実には毒性があるとのことで要注意だ。
小さい頃、よく花の蜜をなめて遊んだ。一番甘かったのはよく見かける赤いサルビアの蜜で、みんなで近所の花壇を回って、サルビアの花を文字通り“総なめ”にしたことがある。
今ならそんなことさえ「問題」にされてしまうかも知れない。
他にはツツジの蜜や、うっすらと甘い気がする程度のシバザクラも、みんなけっこう吸っていた。
こういうことも、年上の子どもたちから代々伝えられていた。
ずっと後になって、サルビアの蜜にはわずかに毒性があることを知った。子どもが吸うくらいなら問題ない程度だと思う。ツツジも、種類によっては強い毒性があるものもあるらしい。これも当時はそんなことは知らなかった。
キノコは言うまでもなく、実も花も葉っぱも、知らないものはうっかり食べないにかぎるが、自然の花に隠された甘味に触れた記憶は、お菓子とはまた別次元の不思議な魅力を持ってよみがえってくる。