
この話は、二人のオランダ人がノームの世界に足を踏み入れ、彼らの生活を知り、それを書き記したもの、ということになっている。「ノーム」出版から5年後、今度はノームたちから招待されたのだ....
「今回も、会えば会うほど、わたしたちは、かれらがどれだけ進んでいるかを思い知らされました。
ノームの生きてきた世界は、わたしたちの世界よりずっと古く、完成された世界です。かれらは、わたしたちが過去にも未来にも聞くことのできない声に、耳をかたむけています。」(本文より)
不思議な方法でノームそっくりに小さくなった二人は、ノームたちと生活を共にしながら彼らの暮らしをより詳しく紹介している。
今回紹介されるノームのテクノロジーもすごい。
水力による圧縮空気を利用した掘削装置やエアーコンプレッサー、エレベーターにロック・ドア....
ノームの子育ては、安心感が基本になっている。
「…大地と一体だという感覚と安心感が、宇宙と地球がひとつにとけあっているという感覚を生み出します。これは人間には、めったに起こらないことです」
「自然との調和ということは、ノームにとっては身体にしみこんでいることなので、人間たちの侵略欲や残酷さについては、見当もつきません」
「ノームは必要なときしか急ぎません……ノームたちは長生きなので、時間がたっぷりあるのです……それに、長生きなのは急がないからなのです」
このシリーズの翻訳者のひとりが遠藤周作だ。シュタイナーの哲学に親しみ、晩年は「私はもう無意識の世界のことしか書かない」と言っていた。
「秘密のノーム」のあとがきにはこのように書いている。
「…これからの科学をつきつめた人はやがて科学の向こうにある神秘に頭をたれるだろう。……神話や童話が生きていた頃、人間と自然や大地は交流していた。……だがエセ科学のおかげで、それらは人間が「観察し利用する」ための存在にすぎなくなり、「共に語りあい、共に交流する」ことのできる存在ではなくなったのだ……ノームは、我々がふたたび、かくありたいと思っている存在なのである。」
この物語の中のノームも、ウルスラ・ブルクハルトのリアルな自然霊との交流の記録も、人間をある確かな方向に導いている。
期せずして、小川が合流してひとつの川になる地点を見たような気分になった。