「ムーミン谷の冬」より。
冬眠から目覚めてしまったムーミンにとって、冬に出あうものは見慣れないものばかりだ。
(たったひとりでも、ぼくがむかしから知っているものがいるといいんだがなあ…だれか、ふつうの生きもので、やっぱり目がさめて、さびしく思っているものがさ。)
ムーミンは、そんな見慣れないものたちのことを気にかけている。
「だって、あの人たちのことは、ぼく、なにも知らないんだものね....」
「…それはこういうわけなのよ」
と、トゥティッキは話し出した。この世界には、夏や秋や春には暮らす場所をもたないものがいるのだ....
「…みんな、とっても内気で、すこしかわりものなの。ある種の夜のけものとか、ほかのひとたちとはうまくつきあっていけない人とか、だれもそんなものがいるなんて、思いもしない生きものとかね....」
その人たちは一年中隠れていて、ひっそりした冬になると、やっと出てくるのだという。
ムーミンは、夏のムーミン谷のことを、「ほんとうの世界」と呼ぶ。でもトゥティッキは言う。
「だけど、どっちがほんとうの世界だか、どうやってわかるの。」
ムーミン谷は魂の中の世界のようだ。
だとすれば、冬の生きものたちは、ふだんは深いところに隠れていて意識の上に上ってこない、その魂の持ち主さえ、それが自分のものだと思えないような魂のはたらきにも見える。
トゥティッキはそうした生きものたちを知っていて、そっと見守り、姿が見えなくなったトンガリネズミたちといっしょに暮らしたりもする。
トゥティッキは、どこかスナフキンに似ている気がして、スナフキンの女性版のようにも見えるのだが、一方でまったく対照的でもある。
スナフキンは人の世話などまっぴらで、誰にも邪魔されずに自由でいたいと思うだろう。
スナフキンが南へ旅立ったあとの冬、トゥティッキは水浴び小屋に住んでいる。春には、スナフキンが帰ってくる前に、手回しオルガンを弾きながら谷間のむこうへ去ってしまった。
2人が顔を合わせることはない。もし会ったらどうなるのか、気が合うのか合わないのか、あまり想像がつかない。
2018年12月27日
冬の守り人
posted by Sachiko at 20:04
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