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サンタクロースからの最初の手紙がきたのは、1920年、長男のジョンが三歳のときでした。それから20年以上にわたって、その下のマイケル、クリストファー、プリシラが子どものあいだずっと、手紙はクリスマスごとに絶えることなくとどきました。
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…このように、トールキン家のクリスマスには、北極の切手が貼られたサンタ直筆の手紙が届き、そこには北極でのさまざまな様子や、手伝いの北極熊、エルフやノウムのことなどが詳しく書かれていた。
表紙の絵は、1926年の手紙に出てくる、北極熊が2年分のオーロラ花火を爆発させてしまったときのものだ。それで、翌1927年の手紙には、今年はオーロラはぜんぜんなしだ、と書かれている。
1928年、北極熊は広間の階段から転げ落ちてプレゼントの箱の幾つかをつぶし、1929年には強い風の吹く北の窓を開けたため、プレゼントの送り先を書き込んだ書類とリストに埋まった。
1930年には北極熊が病気になり、11月から始まる仕分けや荷造りに熊の手を借りるわけにいかなくなった。
世界恐慌や戦争の足音など、不穏な1930年代、サンタの手紙はそうした時代背景もにおわせている。
1931年の手紙は、こんな前置きで始まっている。
…あんた方は、めいめいの注文の品があまりきていないし、数もいつもみたいにたくさんないと思うかもしれないが、今年のクリスマスは、世界中で、とてもたくさんの人たちが、お金も食べるものもなくうえかけていることを忘れないでほしい....
でも北極熊はあいかわらずで、持っていたろうそくを花火の箱の中に落とした。
1932年、イギリスに送る品物が置いてある地下室が、ゴブリンに襲われた。だれに送る品もほとんどない、新しく手に入れたり作ったりする時間もない。
今年はもうクリスマスがこないんじゃないかと思うところだった...と書き始められている1933年、倉庫を襲うゴブリンとの戦いが繰り返された。
1934年、去年のおそろしい事件のあと、ゴブリンたちはいなくなったようだった。
1935年、ゴブリンと縁が切れたわけではなかった。世界中で数が増えているという。まったくやっかいなことが持ちあがった...
この1935年は、トールキンがホビットのビルボ・バギンズの冒険を4人の子どもたちに語りはじめていたそうだ。
手紙はこの後、もう数年届く。毎年の手紙には、サンタクロースが描いたたくさんの絵が添えられている。
トールキン家のすばらしいクリスマスの話は明日も続く。