「ムーミン谷の冬」より。
ムーミンたちは、先祖代々のならわしで、11月から4月まで冬眠をする。
でもある冬、ムーミンはふいに冬眠から目覚めてしまい、それきり冬眠に戻ることができなくなってしまったのだ。
ムーミン屋敷は、まるで見慣れないもののような姿でそこにある。ママを起こそうとしたが、ママは目覚めない。
「世界じゅうが、どこかへいっちゃったよ。」
皆が、それも一番近い家族が眠っている中、たったひとり目覚めてしまう....
これは現実の眠りにおいてか、それとも“意識”においてか、いずれにしてもこのあとに見聞きすることや起こることに、ムーミンはひとりで対するしかない。
スナフキンの春の手紙を探し、何度も読み返す。スナフキンに会いに南へ行こうと思い立つが、戸も窓も凍りついている。
ようやく屋根裏の引き戸から外に出ると、そこは見たこともない世界だった。
緑はなく、白一色。すべては静止し、物音もしない....
「これがきっと、雪というものなんだ。」
南へ向かって歩いていると、おさびし山が見えた。あの山の向こうにスナフキンはいる...
ムーミンは思う。ぼくがいま、あの人にあうためにこの山をのぼっていると、あの人が知っていてくれたら、ぼくは、この山をこえていけるんだがなあ。
これはまさしくそうなのだ。向こう側からも、こちらに向かって伸ばされている手があるとわかっていれば、道のりは半分になる。でもこの時のムーミンには、それは望めないことだった。
すべてが凍りつき、色も音も動きもなくなってしまったような、北国の冬。けれどその中に入り込んでいくと、冬ならではの色や音が現れてくる。
雪はけっして白一色ではなく、いつも冷たいわけでもない。
ムーミンがこのあと出会うトゥティッキは、そんな雪のさまざまな表情について話してくれる。この続きはまた明日....
2018年12月05日
冬の目覚め
posted by Sachiko at 21:37
| Comment(2)
| ムーミン谷