2018年07月14日

「おもいだしてください あの子どもたちを」

「おもいだしてください あの子どもたちを」(ほるぷ出版)

この写真絵本は、私の絵本コレクションの中では異色の1冊で、楽しくもなければ牧歌的でもない。

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写真に写っている子どもたちは、普通に学校で学び、、教会で祈り、友だちと遊び、普通に暮らしていた。けれどあのときから、胸に“Jude”と書かれた星のかたちのアップリケをつけさせられた。

学校は閉じられ、教会は焼かれ、住む家も奪われて、ときには家族から引き離されて遠い土地へ送られ、死に追いやられた。
写真に写っているのは、殺された子どもたち、そして、生きのびた子どもたちだ。

中に1枚、子どもたちではなく、ハーケンクロイツの小旗を振って広場を埋め尽くす群衆の写真がある。

私は、大ぜいの人間がいっせいに同じ格好をして同じ声をあげるのを見るのが苦手だ。たとえよき意図による場合でも。そこに“なにか”が忍び込むのを感じてしまうからだ。

ナチス時代を生きた女性の話を何かで読んだことがある。
戦前のドイツでは厳格な教育が行われ、特に女性は、優しく親切で従順であることを求められ、怒りや憎しみなど“わるい”感情を持つことは許されなかった。
ヒトラーが現れてユダヤ人を迫害し始めたとき、彼女の中から、それまで抑えられていた激しい感情が噴出した。ユダヤ人に対してだけは、憎みたいだけ憎んでもよかった。
「そのようにして、わたしはナチスに加担しました」とその女性は語っていた。

抑圧された影、内なる悪。
またしても、ひとりひとりの人間の内面の問題に帰ってくる。「内なる悪」を、外側に追いやってしまわずにいることは、簡単ではないけれど。

「そう、わたしたちは、あの子どもたちをおもいださなくてはならないのです」(最後のページより」
 
posted by Sachiko at 22:39 | Comment(2) | 絵本