2018年07月04日

「にぐるまひいて」

「にぐるまひいて」(ほるぷ出版)

wagon.jpg

やはり私はこういう話が好きなのだ。

以前紹介した、かご造り職人の話「満月をまって」に似ている。絵も、同じバーバラ・クーニーによるものだ。
似ているけれど、こちらは、ある家族の季節ごとの暮らしのいとなみを、感情を交えず淡々と描いている。


 10月 とうさんは にぐるまに うしをつないだ

そうして、1年間に家族みんなで作り、育てたものを積み込む。
羊の毛、それを紡いで織ったショール、編んだ手袋、みんなで作ったろうそく、亜麻から育てて仕上げたリンネル...
屋根板にほうき、ジャガイモやリンゴなどの作物、はちみつ、メープル砂糖、ガチョウの羽根

荷車を引いて父さんは、10日がかりでポーツマスの市場に着く。
父さんは持ってきたすべてのものを売り、最後に荷車と牛も売る。それから市場で、家族の仕事に必要なものを買い、最後に、ささやかな楽しみのためにキャンディを買った。
そしてまた長い道のりを歩いて家に戻る。

冬中かけて、織ったり、編んだり、木を伐りだしたり、春には羊の毛を刈り、作物を植え、また新しい1年が巡っていく....


ここに登場する名もない人々は、それぞれが、文化の作り手だ。
この暮らしからは、ある種、人間としての誇らしさ、大地に根差した力強さを感じる。

文化は元々、こうした暮らしの深みから生まれたものだった。というより、暮らしの在りようそのものが文化なのだと思う。
現代の都市生活は、文化を生まなくなった。文化は外部から提供されるものになり、自分の生活と直結した根を持たないことも多い。
ミヒャエル・エンデは、「このままでは人類は文化というものをすっかり失くしてしまう」と警告していた。

最後に作者の言葉が載っている。

「この話は近所に住んでいたいとこから聞いたものです。そのいとこは幼いころ、ある老人から聞き、その老人は子供の頃に、大変なお年寄りから聞いたのだそうです」

語り継がれたものは、あるとき失われてしまった、暮らしの営みだった。
 
posted by Sachiko at 22:18 | Comment(4) | 絵本