2018年06月27日

「ユニコーン伝説」

「ユニコーン伝説」(偕成社)
物語は、「大どろぼうホッツェンプロッツ」「小さい魔女」「クラバート」などで知られるドイツの児童文学作家、オトフリート・プロイスラーの作。

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昔、ユニコーンをつかまえようとした三人兄弟がいた。
ユニコーンの角は象牙でできていて、ひづめは純金、ひたいには宝石が輝いているという。つかまえれば金持ちになれると考えた三人は、長い旅に出た。

途中の村で立ち寄った店の主人に、娘のおむこさんになってほしいと言われ、長男はその村に留まることにする。
あとの二人は旅を続け、砂漠で金の塊をみつけた。二男は次の町で家と立派な服を買い、その町で暮らすことにした。

末っ子のハンスはひとりで旅を続けて、地の果てにやってきた。
そこでユニコーンのことを尋ねたおじいさんは、こう答えた。
「ユニコーンを見つけたかったら、火の中、水の中をくぐり抜け、闇と氷の世界を突き進まなくてはならない」

ハンスは突き進み、やがて、森にいるユニコーンを見つけた。角は象牙、ひづめは純金、ひたいには宝石。
ハンスが鉄砲を構え、引き金を引こうとしたその時…ユニコーンがハンスをみつめた。ハンスはその美しさ、気高さに驚き、時のたつのも忘れた。

長い時が経ち、ふるさとに戻ってきたハンスが旅の話をすると、子どもたちはじっと聞き入り、しあわせな気持ちになる....


物語も緻密な絵も、古典の香りが漂っていて美しい。
ユニコーンの気高い姿....

ほとんど死語になってしまったような「気高い」という言葉、日常耳にすることはなく、現代文学でも使われないだろう。
このような言葉がまだ居場所を持っているのが、古典(または古典を題材にした物語)の魅力のひとつだと思う。

最後、話をきいた子どもたちがしあわせな気分になるのは、美しく気高いユニコーンが、遠くの森でまだ生きているからだ。

posted by Sachiko at 21:18 | Comment(2) | 絵本